クイック粥

 美人で、スタイルも良くって、性格もいい。なのに、ブレークしない。こんな女性タレント、いますよね。例えて言えば、「お粥」という食べ物は、こんな感じでしょうか。

・血行を良くし、代謝を上げてくれる
・食べると、体の中から潤うことができるため、美肌効果がある
・胃腸に負担をかけないので、消化が良く、デトックス効果もある

 まさに、いい事づくめなのに、間食シーンでは、なかなか”人気”が出ない。風邪をひいたときや、お腹を壊したときに食べるものというイメージが、強すぎるためなのでしょうか、それとも、作るのに、時間がかかるという先入観が強いためなのでしょうか。だとしたら、あまりに、モッタイナイ!
 日本では長い間、「病人に寄り添う食事」であり続けてきたことからも分かるように、お粥には、たくさんの効能があると言われています。それを、鎌倉時代の禅僧である道元禅師は、 『魔訶僧祇律』という仏典から引用して、以下のように、『粥有十利』(しゅうゆうじゅり)と呼ばれる「十の功徳」にまとめています。
「色」…顔色や肌ツヤを良くする
「力」…体力・気力をつける
「寿」…寿命を延ばす
「楽」…胃に優しく、体が楽になる
「詩清弁」…頭の働きが向上、言葉が清く爽やかになる
「宿弁を除く」…胸のつかえが治る
「風除」…風邪をひかない
「飢消」… 空腹を癒す
「乾消」… 喉の渇きを癒す
「大小便調適」…お腹の調子を整える
 お粥は、まさに、どの観点から見ても、「体が喜ぶ食べ物」なわけなんです。

 作るのに、時間がかかるというのも、大きな誤解です。確かに、本格的なお粥を作りたいと思ったら、おコメを研ぐところから始めなければなりませんが、「クイック粥」という、炊いて残ったご飯からお粥を作るという簡便な方法もあるんです。これだったら、5分でお粥が作れます!
 作り方は、以下の通りです。
①茶碗一杯分のご飯を用意する。
②鍋に、水と昆布を入れて、火にかける
③そこに、ご飯を入れて、ヘラでほぐす
④沸騰したら、アクを掬い取り、弱火にして、2~3分煮る。
⑤昆布を取り出して(質のよい昆布は、引き上げなくても可)、塩を加える。
⑥さらに、水溶き片栗粉を加え、とろみを付ける。

 以上で終わり。どうです、拍子抜けするほど簡単でしょう? 昆布を1枚入れるのは、味のバランスをよくするためだとか。
 お粥作りの第一人者である、料理研究家の野崎洋光先生のアドバイスによれば、調理のポイントは、ご飯粒の形状が残るよう短時間で仕上げること、片栗粉でしっかり、とろみを付けること、の2点だそうです(詳しくは、先生の著書『からだが喜ぶ おかゆ料理帖』(PHP発行)を参照して下さい。














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「もう少し、時間をかけてもいいので、本格的なお粥を食べたい」という人は、別途、ダシ汁を作っておいて、それで20分程度、ご飯を煮込んで、ダシの味をご飯に沁み込ませれば、より美味しいお粥が出来上がります。煮込み方は、鍋を火にかけ、まずは強火で沸騰させ、そのあとは弱火、を基本にして下さい。ダシは、食材が魚介類のとき昆布、野菜のときは煮干し、と覚えておくといいでしょう。詳しい作り方は、韓国出身の料理研究家、チェ・ジウンさんの著書『食べるクスリ おかゆ』(ブロンズ新社発行)を参照して下さい。著書には、ほかに、30分程度、水に浸けておいたおコメをミキサーにかけ、それから鍋で、5分程度、煮て、お粥を作る、簡便な方法も解説されてますから、併せて、試してみて下さい。










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 お粥の作り方がわかったところで、次は、お粥に何を載せて食するのかということです。基本は、「塩気があるもの(例えば、塩鮭、アジの干物など)+薬味」ということになりますが、他に、「醤油風味のあるもの」(例えば、牛肉のしぐれ煮、ショウガの醤油漬けなど)や「異なる味わいの食材の組み合わせ」(例えば、餅+とろろ昆布、温泉タマゴ+ホウレン草の浸しなど)でもOKです。チェ・ジウンさんの『食べるクスリ おかゆ』には、症状別に、どういう、お粥が効くのか、巻末に一覧表が載っていますので、間食にお粥を食べながら、ちゃっかり(?)、病気も予防したいと考えている人は、参考にするとよいでしょう。
 お粥の場合、自由度がありすぎて、何を載せるのか迷うところですが、そうした人のために、医学博士の帯津良一先生が、ご自身の著書『美味しい、おかゆ』(料理研究家・検見崎聡美先生との共著。河出書房新社発行)の中で、食事の「ときめき」の大切さを説かれています(同書P56~57)。ご自身の、長い、がん治療経験を元に、「ときめいて食べれば、自然治癒力は、いやが上にも高まって、食材の不利を補って余りある」と。これは、裏を返せば、それを載せて、ときめくかどうかを基準にすれば、お粥に載せるものは、自ずと決まってくるということでもあります。例えば、冷蔵庫を空けてみて、塩鮭とアジの干物があったとします。どっちにするか? 迷うところですが、「どっちを載せれば、ときめくか」を基準にすれば、その日の気分を体に聞いてみて、「今日は、ちょっと塩っ気のあるものが食べたい。塩鮭にしよう!」というように、自ずと決まってくるはずです。要は、お粥の場合、そういう直観というかノリが大切ということで、この項、おあとがよろしいようで。














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