おコメをキーワードに考えてみたら

 料理研究家の辰巳芳子先生が書かれた『続 あなたのために お粥は日本のポタージュです』(文化出版局発行)という、この本。装丁からして、まず、他の料理本とは違います。表紙が、何と、あのイタリアの巨匠、ジョルジュ・モランディの静物画なのです。日本では、よっぽど、絵画やイタリア映画(例えば、フェデリコ・フェリーニの『甘い生活』など)に造詣が深くないかぎりは、知らないはずの画家なので、不思議に思い、本の前書きを読むと、辰巳先生が、モランディの絵をこよなく愛している由! それで、合点がいった次第です。この絵は、辰巳先生が編集者に直々に頼み込んだ絵だったんですね。
 本の中身は、タイトルからも分かるように、要は、お粥の作り方と味わい方を紹介した本なのですが、その出発点が、「日本人が古来、馴染んできた、お粥、おじや、重湯は、立派なポタージュではないか?」というところにある点が、画期的だと思うのです。お粥の作り方・味わい方を紹介した本は数あれど、お粥の持つ「スープ性」に着目した本は、おそらく、この本が初めてではないかと。















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 で、辰巳先生が辿り着いたのが、おコメの持つ旨味です。ちょっと長くなりますが、その経緯について、辰巳先生が分かりやすく解説していますので、引用させていただきます。

「私は、粥を炊く過程で得られる、重湯というものの、かけがえのない旨味に、独自のスープ性を見出し、新たな”ポタージュ”として、世に問いかけてみたいと考えています。スープには縁の遠い方々にも、我が事として、お粥に他の養分を添え、スープ性を作り出すことは容易です。
 粥のかけがえのない、口ざわりと旨味、日本の米のみに託された、新たな手法です。西欧の料理人に、この意味で”米”を紹介したい。」

 どうですか、辰巳先生の、並々ならぬ決意のほどが伝わってくる文章じゃないでしょうか。この文章に触れた瞬間、「お粥をいい加減な気持ちで食べたら、罰が当たる」。そう、思いました。と同時に、「何も、グルメして歩かなくったって、日本の cool な食べ物は、おコメをキーワードに考えていけば、身近にいっぱいあるんじゃないか」と気づかされたのです。それが、「クイック粥」はじめ、「生ふりかけ」「おにぎり」「お茶漬け」であり、「具だくさん味噌汁」なのです。(⇒次回に続く




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