生ふりかけ

「ふりかけ」って聞くと、ほとんどの方は、子供のころ、食卓にあった、あの丸美屋の「ふりかけ」のことをイメージすると思うんですが、あの「ふりかけ」は、じつは、本来の「ふりかけ」の姿ではないんですよ。「ふりかけ」っていうのは本来、もっと生っぽいものであり、我々が、よく目にするフレーク状のものではなかったのです。このブログで、わざわざ、「生ふりかけ」と銘打っているのもそのため(^^)。
 どういうことかと言うと、本来、「ふりかけ」は、和食のベースである、ご飯だけでは取り切れない栄養素を補うための「常備菜」だったからです。「常備菜」とは、大豆製品や海藻、乾物、ゴマなどの種実といった素材を利用した副菜のこと。それらの「常備菜」を、より手軽に、そして、食べやすく改良したのが、「ふりかけ」なのです。ただし、それでは、保存に堪えられないというので、今の、原料を粉砕し、調味料で味付けしたあと完全乾燥させ、他の具などを混ぜ合わせてフレーク状に仕上げる、という製法に変化していったわけなのです。
 それは、ある意味、時代の要請という側面もあったわけなのですが、人々の健康への関心の高まりとともに、次第に製法が受け入れられなくなりました。そして、結果的に、「ふりかけ」という食べ物が、日本の食卓から姿を消しつつあるという、とても残念な結果も招いたわけです。
 市販されている「ふりかけ」のほとんどが「塩分と食品添加物の塊である」という、負のイメージをここから払拭するのは容易なことではありませんが、一方で近年、「ふりかけ」という食べ物が本来、持っている効用、つまり、足らない栄養素を簡単に補えるというその効用を見直そうという機運も、徐々に盛り上がってきています。冷蔵庫の中にある残り物をアレンジして簡単に作れ、しかも、保存が利く(カラカラに乾燥させたものなら、容器に保存しておいて、2~3週間は美味しく食べられます!)ので、間食用の食べ物としても、うってつけです。
 ある意味、箸で口の中に入れたときの、パラっとした食感勝負の食べ物なので、作り方のポイントは、メイン素材(野菜や漬物など)に含まれている水分をいかに飛ばすか、この一点に尽きます。多くの場合、できるだけ素材を細かく切ってから、炒るのはそのためです。この過程で、ほとんどの水分が飛んでしまうので、長い場合は、2~3週間もの保存が利くわけです。あとは、最後に、好みに応じて、乾物(海苔やゴマなど)をミックスするだけ。これで出来上がりです。
 素材に含まれている水分を飛ばすのがコツ、と言いましたが、その飛ばし方も、じつは好みによります。「少し生っぽいほうが、歯ごたえがあって好き」という人は、炒る時間を短くしたり、火加減を弱くして調節すればいいでしょう。ただし、生っぽければ生っぽいほど、保存期間はそれだけ短くなります。
 まあ、とはいえ、ふりかけなんて作ったことがないという人がほとんどでしょうから、その簡単さを理解してもらうために、「ネギ+白ごま」という、極めてシンプルな「ふりかけ」を例に、作り方を一応、記しておきますね。

①ネギをみじん切りにして、水気を絞る。
②フライパンにごま油を熱して、みじん切りしたネギを炒める。
③ネギがしんなりしてきたら、味噌と白ごまを加えて混ぜ、さらに5~6分、炒めて、ぽってりしたら、火を止めて完成。
 
 どうですか? 材料さえ揃っていれば、10分足らずで出来てしまいます。2種類の素材だけでできる「ふりかけ」には、他に、「梅干し+海苔」、「塩鮭+カットわかめ」、「タラコ+海苔」などがあります。具体的な作り方を知りたい方は、料理研究家の幕内秀夫先生が書かれた『ふりかけ101』(学習研究社発行)などを参考にして下さい。ふりかけの場合は、素材が、2種類であっても3種類であっても、作る手間は、さほど変わりませんが、最初、2種類からスタートし、少しずつ素材の種類を増やしていくやり方のほうが、心理的にも負担にならないでしょう。



 










※画像をクリックすると、出版社のページに飛びます。

 それでも、「なんか、面倒だなあ」という人のために、包丁やフライパンを使わない、ふりかけの作り方を、特別に、お教えしましょう(他の人に教えちゃダメですよ、ゼッタイ!)。
 名付けて、『いつでも生ふりかけ』。作り方は、こうです。まず、鰹節、昆布、ごま、いわし煮干し、くるみなどの乾物をいくつか、買い揃えておきます。そして、ふりかけモードになったら…

①揃えた乾物の中のから、鰹節以外で、いくつかセレクトし、ボールに入れ、箸などでかき混ぜる。
②そこに、市販のうどんつゆを少量ずつ加え、混ぜ合わせる(味見して、必要なら、水を足す)。
③つゆが全体に沁み込んだら、鰹節を加え、混ぜ合わせて完成。

 さあ、ぜひ、温かいご飯の上に載せて、食べてみて下さい。もう、病みつきになっちゃいますよ! あ、そうそう。開封した乾物の封、閉め忘れることのなきよう。この際、蓋付きのビンに移し替えておくのも手です。


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